エレベーターから始まる恋
定時できっちり仕事を切り上げ、「お先に失礼します」と挨拶してそそくさとフロアを後にする。
エレベーターで1階に降り、出入り口付近に寄りかかる。
しばらくすると、ぞろぞろと人の波が出来てきた。
流れるように動く人並みの中に、あの人はいないかと目を凝らす。
「あっ…」
頭ひとつ抜き出ている、長身の男性。
腕時計をチラッと確認しながらこちらに歩いてくるのが分かった。
「あ、あの」
横を通り過ぎようとする彼を呼び止める。
視線がゆっくりと落とされ、やがてしっかり交わった。
驚いたように少し目を見開く。
「君…」
「あの、郡司さん。この後少しだけ、お時間頂けないですか?」
そう問うと、一瞬考えるような素振りを見せ、すぐに向き直った。
「何食べたい?食事でもしよっか」
「は、はい!」
まさかそんなに時間を作ってもらえるなんて思ってもみなかった。
自分の気持ちを伝いたい一心だったから、改めて食事の場を設けられるとどう話したら良いのか迷いが出る。
先を行く郡司さんの後を追うようにビルを出た。