貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「はぁ……」

月末を乗り切り、迎えた月初2日目。今日は木曜日だ。
諸事情により創ちゃんを置いてさっさと退社した私は、一人近所を歩いていた。

少し遅れてやって来た女の子の日。だからか今月はいつもより重い気がする。家に帰って軽くご飯を食べ、すぐに痛み止めを飲んで、しばらくしてから外に出た。さすがに男兄弟には頼めない買い物だし。

ドラッグストアは、店が並ぶ通り沿いにある。その手前は、ちょっとばかり高級なスーパーだ。先に何か甘いものでも買おうかなぁ、と顔を上げた先を見て、私は凍りついた。

「買い過ぎじゃないか?」

スーパーから出てきたのは創ちゃんだ。片手に大きな紙袋を抱え、もう片方は手から下げている。

「いいじゃない。美味しいもの、食べたいでしょ?」

隣に並んでそう答えたのは……枚田さん。恋人同士を通り越して、新婚夫婦に見えるくらい仲が良さそうだ。

「大きい冷蔵庫にしといて正解よね。創のアドバイス聞いといて正解!」

枚田さんは明るくそんなことを言っている。

「澪にしては珍しく素直に話を聞いてたからな」
「失礼ね! 私はいつも素直よ!」
「はいはい。ほら、帰るぞ」

すぐ後ろで俯いている私に気づくことなく、2人は楽しそうに並んで歩いて行く。私はその姿を目で追い続けることなどできず、しばらく項垂れていた。

それから、ぼんやりと買い物をして、ぼんやりと歩いて家に帰った。

「おかえり。……与織ちゃん? 体調悪い?」

私が出かけている間に帰っていたみー君にそう尋ねられる。

「あ、うん……。ちょっと頭痛くって」

元気など出せるはずもなく答えると、みー君は心配そうに私を見ていた。

「大丈夫。薬も飲んだし寝たらよくなるよ。先に寝るね」
「わかった。お大事にね」

みー君はふんわりと笑うと小さく頭を撫でてくれた。

部屋に戻ると、そのままベッドに潜り込む。部屋を暗くすると、なんだか余計なことをたくさん考えてしまいそうで消せなかった。

私……なんでこんなにショックを受けてるんだろう。最初から、わかっていたはずなのに。

偽物は、偽物ものでしかないのだから。
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