貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「課長。この度はご心配をおかけしました。おかげで、なんとかなりました」

創ちゃんは立ち上がりそう言うと、課長にお辞儀をした。

「なぁに、僕のほうこそ、色々と世話をかけたね」

穏やかに課長はそう言った。 

そういえば……とふと思い出す。前に清田さんが言った言葉。あれは、『課長は頼りない』じゃなく、『頼りなく、見える』だったことを。そう言えば、見えるだけで頼りないとは一言も言っていない。

「それにしても、桃花ちゃん。その、課長とは……いったい……」

さっき耳に入った『桃ちゃん』呼び。まさか、いや、課長は既婚者だったはず、と頭の中がグルグルしている。

「え? 兄、なの。義理の。お姉ちゃんの旦那さん」
「そうなの⁈」
「うん。うちの実家にお兄ちゃんが営業に来たのがきっかけなんだけど!」

思わず課長の顔を見ると、「いやぁ、お恥ずかしい」と頭を掻いていた。
それから課長はいっちゃんに向くと手を差し出した。

「朝木部長。この度はお力添え、ありがとうございました。これでまたうちはやり直すことができます」
「こちらこそ。一度失った信用を取り戻すのは簡単ではないでしょう。これからも、手を取り合っていきましょう。鈴木社長」

そう言って2人はガッチリ握手を交わしていた。

って待って? 今、最後になんて言った?
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