貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
なんとか初日を終えて、私は一人家に帰っていた。

「ただいまぁ……」

鍵を開けて中に入りそう言うが、もちろん誰も帰っているわけはなく明かりのついてない廊下に虚しく自分の声が響いていた。

そりゃ、みんな忙しいの当たり前だよね……

みー君も残業になり、一緒に住む兄達とのメッセージグループにも、『ごめん!遅くなる!』と次々入っていた。

新年度に入ったばかりの月初。さすがの私も自分の職場の雰囲気から忙しいのは肌で感じていた。特に主任から……。

清田さんは時短を取っていて、定時1時間前の4時半に仕事は終わりだ。今日はそれまで、マニュアルのファイルを広げて色々とレクチャーしてくれていた。
清田さんの教えかたはとっても丁寧で、マニュアルもわかりやすくて、2人で和気藹々と話をしていたのだけど、ふと振り返ると主任だけ鋭い目つきでパソコンに向かっているのが目に入った。

もちろん清田さんが帰ったあとも、私が帰るときもそれは変わらなかった。書類の入力をしているのか、主任はキーボードをずっとカシャカシャ叩いていて、挨拶してもチラッとこちらを向いて「お疲れ様でした」と言っただけだった。
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