貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「いっちゃん、どれ食べる? 甘いのあんまり食べないでしょ?」
「あぁ。与織子が食べたいの食べればいいぞ? 俺はあまりもので充分」
「こんなにいっぱい入るかな?」

そう言いながら、三段になったスタンドの下からサンドイッチを取り分ける。ローストビーフとかエビの入ったサンドイッチはいっちゃんにお任せして、私はフルーツサンドを自分の皿に乗せた。

「じゃ、いただきまーす!」

手を合わせてそう言うと、早速一口齧る。フルーツの酸味とさっぱりした生クリームが絶妙で、さすがコンビニのやつとは違う!と心の中でも叫ぶ。

「お、うまい」

いっちゃんも一口で一気に食べるとそう言っている。

よかった。念願叶って!

そんなことを私は思う。
昨日、お見合い中止を告げられて真っ先に浮かんだのは『せっかく予約してもらったアフタヌーンティーセットが食べらない!』だった。で、それを正直にいっちゃんに話したら、『じゃあお見合い関係なく食べに行けばいい』となったのだ。

もし、お見合い相手とこれを食べることになっていたら、私はちゃんと味わえたんだろうか?だいたい、未だに相手がどんな人なのか、全く教えてもらっていない。お見合いならお見合いらしく写真の1枚でもあっておかしくないのに、それすらないのだから。

だから私は、今日こそはいっちゃんに聞きだすぞ!と一人意気込んでいた。

先に食べることに集中し、残すところは上段のみ、となったところで一息つく。紅茶は飲み放題で種類も選べるから、最初の香りの良いストレートティーから濃いめのミルクティーに切り替えた。
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