貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「ひぁっ!」

私のパソコンの画面を覗き込む主任の顔が間近にある。なんだか一方的に意識してしまって、私の口から変な声が漏れた。

「なんだ?」

訝しげに私を見て尋ねる主任と目が合うと、余計に意識してしまい思わずそっぽを向いてしまった。

「このファルダに申請用紙が入っている。これに入力して、課長に電子決裁で送ればいい。……って聞いてるのか?」

画面を見ているようで見ていない私の耳に、主任の低音ボイスが響く。

「きっ、聞いておりましゅ!」

慌てて答えて最後は噛んだ。恥ずかしすぎて、穴があったら入りたいくらいだ。たぶん、顔を真っ赤にしている私を、少し驚いたように見てから主任は「ふっ」と息を漏らした。かと思うと、主任はそのまま俯き肩を揺らしている。

「ふ、ははっ! おりましゅって!」

その声は明らかに笑っている。それも、見たことないくらいに。

「主任! そんなに笑わないで下さい!」

私の抗議に顔を上げた主任は、それはそれは可愛い顔して笑っていた。
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