貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「じゃあ、それをここにセットして、これがスイッチ。スピード上げると失敗しやすいからゆっくりでいい」

 備品倉庫という名の小部屋。私はそこで、主任に紙折り機の使い方を教えて貰っていた。折るのは先月分の請求書。それを今日絶対に発送しないといけないらしい。

「わかったか?」
「ひゃいっ!」

 今日の私は厄日だろうか。さっきから噛みまくっては主任に笑われていた。

「ふっ!」

 またも私から顔を背けて主任は笑っている。いったい何がツボに入ったのか、まるで今までの無愛想な主任とは別人のようだ。

「主任、意外に笑い上戸なんですね⁈」

 私がちょっとばかり怒り気味に主任に言うと、まだ顔を緩めたまま主任はこちらを見た。

「いや? こんなに笑ったのは久しぶりだ」
「久しぶり……」

 久しぶりがどのくらいかわからないが、その笑いが噛みまくっている恥ずかしい私の姿かと思うと居た堪れない。

「だいたいお前が、かっ……」

 そこまで言うと主任は急に言葉を止めた。

「……か?」

 何だろうと主任を見上げると、主任は口元に手を当てて、私から視線を外した。

「か、揶揄い甲斐があるからだ。じゃあそれ、頼んだぞ?」

 そう言うとそそくさと主任は部屋を出て行った。
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