宿命の星
国に仕える魔導士の1人が予言を残して急死した。

"星流れる朔の日に宿命現る"

刻同じころ、急死した息子の魔導士が姿を消した。
父の暗殺を企てたとして指名手配された。


それから半年後、月隠れ(朔)の日に静かに星が流れる。
数時間とたたない時間に別々の場所で3人の子供が誕生した。


国の外れにある小さな村
臨月を迎える奥さんの為に夫が森にこの村に古くから伝わる万能薬の薬草を取りに行った。
どんな病気や怪我にも効く薬を戦や災いから守る為以前訪れた偉い魔導士様が
"悪しき心の者が入れない"
結界を張った場所だった。


「身重の妻とお腹の子供の為に薬草を分けてください」
夫は心で念じながら森を進んだ。
夫が数歩進まぬうちに当たりは不思議な空間に包まれていた。

「ありがとうございます」
夫は薬草を一房薬箱にしまい村へ戻ろうとする。
突然、そこに1人の旅人が現れ、倒れた。
額から血を流し、服もあちこち切れている状態だった。
「ひどい傷だ」
結界の中に入れた方だきっと悪いものから逃げてこられたのだろう。
と旅人に肩をかし、村へ連れてもどった。

家に戻るとすぐに薬草を煎じて一部を妻用の薬とし、残りの少しを旅人の傷口とのみ薬に混ぜ看病した。
傷と疲れのせいか、旅人はすぐに眠りについた。

旅人が目を覚ましたのは次の日の夕方だった。

パチパチと薪のはぜる音で目覚める。
旅人の目が開いているのに気づき夫が話しかけた。
「ああ、良かった。身体で痛むところはありませんか?」
「…。大丈夫みたいです。ここは?」
「お腹が空いていませんか?食欲があればご飯を用意します、お話しがあればその時にでも。」
「ありがとうございます。では少し。」

夕飯をいただきながら、昨日からの出来事を夫から聞いた。
とても世話になったと礼を言っているときに、奥さんがお腹の違和感を。
「すぐに、助産師さんを呼んでくるから、横になって待ってて」
「私も手伝います。」
旅人は奥さんに肩をかし、隣の部屋の床まで移動した。
助産師がきて、お産が始まると旅人は少し外で待つことにした。

外はだいぶ暗くなっていた。
「今日は月隠れの日だったのか。」
家の縁側に腰を下ろし、南の空を見上げる。
月が隠れる新月の日なので月明かりはなく暗い夜。
南の空が急に明るくなり星が沢山流れてきた。
「流星群!…朔の日に星が流れた」
旅人は空を凝視し、予言の言葉を飲み込んだ。
無数の星が見えなくなる。
家の中から元気な産声が聞こえた。

小さな国の外れの村に女の子が誕生した。
< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop