青い星を君に捧げる【弐】
「しかし、ハジメ様がまさかこの百合の宮にアイラ様を住まわせるとは思ってもみませんでした」


庭園に咲いている白百合を人差し指でちょんと指しながら雅は言った。


「百合の宮はこの本郷家敷地内で唯一、一様が建てさせたものなんですよ」


「唯一?」


「ええ。日本を牛耳る家でございますから大富豪でありますけれど、一様は無駄なことがお嫌いな方ですから」


「ハジメ様は百合が好きなの?」


雅は白百合を手折ると、私の耳にかけてくれた。花の香りが一層感じられる。


「幼い頃から物事に無頓着で当主になってからは冷酷非道なんて言われようですけれど、百合だけはお好きなようですよ」


「そうなんだ。……というかハジメ様は冷酷非道なんかじゃないと思うのだけれど」


私を助けてくれたし、さっきだって負傷している私を気遣ってくださった。まだ見たことはないけれど笑顔だってキラキラ綺麗なはずだ。


「ふふふ、そのように仰って頂けて嬉しい限りです。一様がこのように女性をそばに置くのは初めてのことですし、あのような優しい表情を初めて見ました」


珍しいものが見れて楽しかったです、と雅は笑う。


あんなにかっこよくて、家柄も良いのに女性が周りにいないなんて。
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