島津くんしっかりしてください
鹿島先輩が騒ぎに気が付いて、こちらに歩みを寄せる。






それから、琴音に視線を合わせ、スマイルを一つ。






「はじめまして。俺はお姉ちゃんと同じ学校に通ってる鹿島一輝っていうんだ。琴音ちゃん、でいいのかな?」






その問いに答えることはせず、琴音はまじまじと先輩の顔を見つめる。






「琴音?」






首を傾げると、琴音は私と先輩を見比べて、一言。









「にてる」



「え?」



「まこちゃんとこのお兄ちゃん、すごく似てるね」



「「え」」






揃って目を見開き、それから目を合わせる。






「……どういうところが似てると思ったの?」



「お顔と……あとは、わかんない」






いや、顔は似てないでしょ。



私は吊り目で、先輩は垂れ目。



髪の毛の色は金色と黒色とで正反対だ。





瞳の色は……、







「確かに……真見さんと先輩ってお似合いだよね」



「それわかるー! 優等生な美形コンビ」



「兄弟って言われても違和感ないー」






考えかけて、そんな言葉が聞こえて。






それらに、私はうっすらと笑みを浮かべた。






「……先輩、私って男顔だったんですね」



知りませんでした。






そう呟くと、先輩も同じように。






「いや、俺が女顔だったのかもよ」






そんな風に冗談で返してくれる。






話している間にも琴音はじっと先輩を見つめて。






「一輝だから……いっくん!」



「え?」



「いっくんって呼んでもいい?」



「あー……うん、いいよ」






そんなやりとりに、微かに目を見開いた。






琴音がそんな呼び方をするなんて、珍しいな。




普段は〇〇お兄ちゃん、〇〇お姉ちゃんって呼び方なのに。






私と先輩が似てるって言ってたし、呼び方も似せたんだろうか。






……まぁ、いいか。






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