私の彼氏はクラスで一番、
ドアの音にも気付かないなんて、と阿久津くんが笑う。
窓から射し込む光はすっかり昏くなっていて、ほとんど日が暮れている。
少しだけのつもりが、すっかり遅くなっちゃった。と、慌ててノートやペンを片づけていると、前の席の椅子を引いて、阿久津くんがそこに座った。
そして、じっと私を見上げてくる。
「もう帰る?」
「あ、うん。阿久津くんは……」
「帰るよ。一緒に帰ろ」
「……! うん!」
ここ最近、委員会の当番がある日はそのまま二人で帰っていたのだけど、テスト期間はその当番も免除されてしまう。
そうすると、次に二人で帰れるのはきっとずっと先だなあ、と寂しく思っていたので、思いがけない誘いに嬉しくなった。
ニコニコしながら教材をリュックにしまい込んでいると、阿久津くんが目を丸くする。
そして、「はあぁ~~~……」と大きなため息をついて項垂れた。その表情は、組んだ手と前髪に隠されてしまってよく見えない。