ミーリア国戦記〜癒しの姫は、仲間たちと王国を守り抜く〜

 すると通路の先から、ぱんぱんと手を打つ音が響いた。

「よくぞ申した、リアナよ」

「お父さま……」

 視線の先に、私のお父さまとお母さま、ミーリアの国王陛下とお妃さまが、左右を近衛騎士に守られながら、お姿を現された。

 (ひざまず)く私とレイアに、お父さまは「楽にしてよい」と声をかけられ、お母さまとお二人で、私たちに優しい言葉をかけてくださった。

「リアナよ。兵と共に在りたいと願うそなたの想い、王として父として、まことに嬉しく思うぞ」

「お父さま……」

「本来ならば、この私が剣を下げ兵たちに号令せねばならぬところ、この病んだ身では……」

 お父さまはとても慧敏で聡明なお方だけど、生まれつきお体が病弱だった。
 それを補って余りある、智慧と慈悲の王様なのだけど。

 お父さまは私の肩に手を置き、優しく声をかけてくださった。

「リアナよ。この私の名代となり、兵たちを励ましてやってくれ。頼んだぞ」

 お母さまも、言葉を添えてくれた。

「頼みましたよ、リアナ。皆と力を合わせて、この王国を守ってください」

 なぜだろう。お二人の暖かな言葉を耳にすると、胸がいっぱいになって、涙が溢れそうになる。

 涙ぐむ私に小さく(うなず)くと、お父さまはレイアに声をかけられた。

「レイアよ、娘を頼んだぞ」

「この命に代えましても」

 深々と拝礼するレイアの深紅の鎧が、篝火の照り返しを受けて、紅く輝いた。
 
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