ほどけるいと。

ちょっとしたこと

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~高3~

まだなぁ。

気付かず帰っちゃったのかも。

しゅんとなって,でもでもと自分を励ます。

そんなことあるわけないと,帰れる日,玄関に姿のない私へ,流雨が電話をくれると知っていても。

そんな私のいる喫茶店では,お洒落で落ち着く音楽が流れていた。

ブッっと小さな音に,私は頬杖をついていた手から顔を離す。

流雨の返信を待っていた為に,ワンタップでメッセージ画面を開くことが出来た。

『ごめん。友達と出掛けてる』

「っ……はぁぁぁ」

ずるずると店の机に身を預け,私は小さく情けない声を出した。

今日で,一体何日目。
何回目。

滲む涙に見ないフリをして,私はアイスコーヒーを注文した。

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