猫かぶりの柳沢くんは、独占欲が強め



「俺は、ハスに本当の恋人になってほしい。他の奴に渡したくない。あんたの全部を、独り占めしたい」




一年前、私は仲の良かった同級生・山内に告白をした。

その答えはNO。しかも、さんざんな悪口と共にフラれた。

だから、私にとって最低な人間として一番に思いつくのは、勇気を出して想いを告げてきた相手のことを悪く言う人のことだった。


……でも、それと同じぐらい残酷な行動というものもある。

その残酷な行動を、私はしてしまった。




「っ……」




私は椅子を蹴とばすような勢いで立ち上がった。

うつむいて、柳沢くんの顔を一切見ないまま、すたすたと早歩きで教室を出る。




「ハスっ!」




慌てたように呼び止める柳沢くんの声に、私は振り返るどころか、遠くへ向かって走り出した。


要するに、逃げた。


真剣に想いを伝えてきた柳沢くんに対して何も答えず、逃げて、姿を隠した。



最低。私は山内と同類だ。

頭ではそう思いながらも、その日のうちに柳沢くんの前に出て行くことはできなかった。



< 119 / 217 >

この作品をシェア

pagetop