初恋の味は苦い
混沌とする脳内。

「ごめん、私祥慈とヤッたよね?」
「うん、覚えてないの」
「ほとんど覚えてない」
「昨日が初めてだったんじゃないの」

私は口元に手を当てたまま固まってしまい、呆然と目の前の祥慈の荷物が散らかってる室内を見回す。

祥慈がやっと上体を起こして、私に向き合った。

「りっちゃん、昨日は俺も酔っ払ってたし、りっちゃんも酔ってたんだろうし・・・」

そこまで言われたところで、私は割り込む形で断言した。

「なしで」

軽く衝撃を受けたような表情で「うん」とだけ祥慈は返す。

「昨日のことは、何もなかったことで」
「そう、まさしく俺も同意見です」

私は確認するようにブンブン頷いて、ベッド下に置かれたスリッパを探す。

「大丈夫?」

祥慈が心配したように聞いてきた。

「うん、大丈夫」
「昨日、すごい騒いでたけど」
「え、騒いでた?」

スリッパ探しを一旦やめ、恐る恐る祥慈の方を振り返る。

「『痛い痛い無理無理』『こんなの入るわけない』ってずっと騒いでた」

< 43 / 68 >

この作品をシェア

pagetop