結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 はぁ、と息を吐いたソフィアは、今さらながらアルベルトが大貴族で、誰もが知るヘザーズの社長であることを思い出した。きっと六年間も平民として生きてきたソフィアと感覚が違うのだろう。でも、ソフィアのこれまでの生活を見てみたい、というのであれば平民のようにふるまって欲しい。

「お願いだから、アルベルト。私の日常生活が見たいなら、大人しくして頂戴」
「そんなものかな。周囲にリヒトが僕の子どもだとわかって欲しいけど」
「それはそれ! 今は静かについてきて」
「はは、わかったよ。だったら、歩いていこうか?」
「お願いします」

 それなら服装も変えた方がいいのかな、と言ってアルベルトはジャケットを脱いで帽子を幅広いものに変えた。確かにジャケットのない方が浮かないだろう。

「それじゃ行こうか、ソフィア」

 スッとアルベルトは手を出すと、ソフィアの手を握りしめた。温かくて大きな手で包み込まれる。いつも手をつなぐ相手はリヒトで、とても小さくて自分が守らなければと思って握りしめていた。

 アルベルトの手は節くれだっていてリヒトとは感触が全然違う。何より、自分を守ろうとしてくれる手だ。

 リヒトはソフィアとアルベルトが手をつなぐのを見ると、いきなり「ずるい」と言って騒ぎ出した。

「パパ! パパがどうしてママの手を握るの? 僕のママだよ?」
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