結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 ホテルに併設されているレストランから、毎食注文して部屋で食べている。アルベルトは部屋の方が落ち着けるからと言っているけれど、リヒトがまだマナーをしっかり覚えていないから、レストランで恥をかかないようにとの配慮だろう。

 結局、朝食を頼む時に昼食用のサンドイッチを用意してくれるようになり——、ソフィアは料理という苦渋から解放された。これだけでも朗報だった。

「そうかな、君の愛情のこもった料理が一番だと思うよ」
「そんなっ、あんな味のない料理なんて!」

 ソフィアは思わず大きな声をだしてしまうが、食事のマナー違反であることを思い出し、思わずハッとして口をふさいでしまう。

「ごめんなさい、食事中でした」
「はは、今は家族で食事中だから大丈夫だよ。僕たちのつくる家庭は、もっと和やかに過ごしたいんだ」
「う、うん」
「だからこうして、リヒトも一緒に食べているだろう? 時代は変わっていく。貴族も貴族だと言って威張っていていい時代はもう終わったんだし、僕たちも変わっていこう」
「う、うん」

 確かに厳格な貴族の家では、子どもは別室で食事をするのが常だ。だがアルベルトはマナーは大切だけれど、家族でいる時は別だと思っているようだ。ソフィアも隣に住むレティの家族が仲良く食事をする風景を見て、できれば子どもも一緒に過ごす家庭を作りたいと思っていたから、その考えには賛成だった。

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