結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 久々にエルーサに会うために、ソフィアは出かける支度をした。爪を磨き化粧をすると、かつてのソフィアとは違った装いの美人となる。流行の大きな羽飾りのついた帽子を被り、日傘を持って馬車に乗った。少し気恥ずかしいが、これも仕事の一つだった。

 エルーサはアルベルトの助けを得て会社を興していた。セイリュースで初めての女社長である。その扱う内容は主にナード糸で編まれた刺繍やレース編みのみならず、服飾関係にも及ぶ。ソフィアはうってつけの宣伝係として、エルーサの会社の服を選んで着るようにしていた。

 更に、エルーサはナード糸の製糸工場をアルベルトから譲られていた。それはアルベルトの計画の一つだった。

「ソフィア、ナード畑のことだけど、やはりヘザーズで購入することにしたよ」
「えっ、そうなの?」

 レッドソックスに用事があると言っていたけれど、まさかナード畑のことだとは思っていなかった。ソフィアはアルベルトの真意がわからず、どうして、と問いかけた。

「ナード畑は潰さないよ。更に拡大できるように、候補となる土地を今検討している。目標としては五割ほど作付面積を拡大しようと思っている。ソフィアの作るナード糸の作品を見て、僕も少し考えを変えたんだ。今は、ナード糸の製糸方法が改善できないか研究中だ。うまくいけばナード糸の供給も増えて、値段も下がると思うよ」
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