結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「そうみたいだね。何でも取り仕切っている人物は容赦なく人を切っていくみたいだ」
「そうなのね。もう、これ以上ナード畑が消えてしまうと、益々ナード糸が手に入らなくなるわ」
「そのヘザーズが話をつけに来るなら、地主のレッドロックスのところだろうね」

 ソフィアはレッドロックスという名を聞くと、先日のジミーとの会話を思い出す。ナード糸を求める人は多いのに、それに生産量が追い付いていない。といってもこれ以上ナード糸が値上がりされても、商品の値上げをすれば売れ行きが悪くなるので簡単な話ではない。

「やっぱり、ナード糸がもっと簡単に手に入るようになればいいのに」

 そうすれば母親たちも売り物をもっと作って、店先に並べることができる。観光客も増えているから、きっと買ってくれる人も多いだろう。

「ソフィア、気になるなら一度レッドロックスの所に行ってみたら? 噂を聞いたって言えば、何かしら教えてくれるかもしれないわ。店番なら私がしばらくしておくから、気にしないでいいわよ」
「今ならリヒトも隣の家で遊んでいるみたいだし、そうね。行ってみるわ。何ができるかわからないけど、何もしないで指をくわえて見ているだけではね」
「私も気になるからね。ヘザーズのことは杞憂だといいけど」
「そうよね……」

 ソフィアは深いため息をつくと、気持ちを切り替えるように腕をグッと伸ばした。

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