結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 ソフィアはジミーに頼まれたとあって、急いで奥に行った。このお店にはいつも世話になっている。この街では皆助け合って生きているから、ソフィアは少しの時間であれば、と思って手伝うことにした。

家の中に入ると、いつもより整頓されていて客を迎えるようになっている。通常、貴族とあればこんな平民の住むところに来ることはない。用事があれば平民が呼び出されることが普通だから、ヘザーズの貴族とやらは変わり者らしい。

 まぁ、最近は貴族と言っても名ばかりの家も多くなったと聞いている。産業革命、と言われる新しい技術を取り入れたところに比べ、昔ながらのやり方で税金だけとってふんぞり返っている貴族はどんどんと没落していく。

 ソフィアの父は明らかに後者の貴族だ。古い商習慣にとらわれ、新しい技術や工場を建てるといったことに全く関心がない。社交界での人間関係を重要視して、ソフィアが子どもを妊娠したことも単にみっともないと言って切り捨てた。

せめて兄には違う視点を持っていて欲しいけれど、家を出る時は留学中でしばらく会っていなかったから、どんな人物になっているのか今更知ることはできない。

 それはともかく、ヘザーズから来る人物は貴族と言っても古い考えの人間ではないのだろう。だからこそ、古くからあるナード畑を簡単に潰して工場を建てるようなことができるのかもしれない。

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