愛される女の恋愛テクニック
 わたしの挨拶にも、これまで通り、スマホを眺めたままの短い返事。


 自動販売機に向かうわたしの方を見る事もないし、自動販売機で珈琲を買ってる間も、背後にある櫻庭さんの気配は動かなかった。


 珈琲を買い終わって振り返ると、目だけでこちらを見て、左手を伸ばしてる櫻庭さんがいた。


 伸ばされた左手には、個包装のプリン味の飴。


 告白前と何ら変わりない櫻庭さんの態度に、もしかして告白されてない世界線に来たのだろうかなんて、バカな事を考えたほどだった。


 そんなバカな考えは、飴を貰う為に、右手の掌を上にして、櫻庭さんの左手の下に伸ばした時に消えた。


 飴が掌の上に落ちてきて、「ありがとうございます」と言おうとした矢先。


「連絡先、教えて」

 抑揚のない声で、櫻庭さんに話しかけられた。
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