愛される女の恋愛テクニック
覆される予想
残業の合間に、飲み物を買いに休憩室に行くと、そこで休憩してる櫻庭さんと、たまに会う。
わたしと別の部署で働いてる櫻庭さんとは、社内で会うのはその時くらいしかなくて、櫻庭さんがどんな人なのかは殆ど知らない。
櫻庭さんが「櫻庭」っていう苗字だというのも、首から下げてる、ケース付きネックストラップの中にある社員証を見たから知ってるだけで、本人から自己紹介された訳じゃない。
わたしも特に聞かれた事がないから、自己紹介をした事がなくて、櫻庭さんがわたしの名前を知ってるのか分からない。
そんな櫻庭さんは無口な人らしく、わたしが「お疲れ様です」と挨拶をしても、こっちも見ないで「うん」と返事をするくらい。
ただ、最初のきっかけが何だったかは忘れたけど、櫻庭さんは休憩室で会うと必ず、個包装になってる飴やチョコレートなんかの小さなお菓子を、ポケットから取り出して、無言でわたしに差し出して、くれる。
会うと、お菓子をくれる人。