紅蓮の炎は心を壊す

囲炉裏に火を起こそうとした時、紅葉は囲炉裏に置く薪が全くないことに気付いた。これでは、火をつけることができない。

ため息を一つ吐き、紅葉は薪を拾うため外に出る。どれほど時間が経ったのか、少し前まで明るく思えた空は薄暗くなっている。早く薪を拾って家に帰らないとすぐに辺りは暗くなるだろう。

「早く帰らなくちゃ……！」

幸い、紅葉の家の裏は山のため、薪として使えそうな枝はたくさん取ることができる。だが、薄暗くなった山は動物たちが活発に動き始め、動物の鳴き声などが不気味に聞こえてしまうのだ。

「しばらく来なくてもいいように、少し多めに取っておこう」

ビクビクと体を震わせながら、紅葉は枝を集めていく。十分すぎるほど枝を拾い、家に帰ろうかと紅葉が家に向かって歩き出そうとすると、耳に動物の鳴き声ではない音が聞こえた。風の音や、虫の鳴く音でもない。

「ーーーい！ーーーか！」

それは、明らかに人の声だった。紅葉は耳に意識を集中し、声がどこから聞こえてくるのかを探る。そして、一歩ずつ声のする方へと近付いていった。