姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~

「………ッ!?」


フレデリックは頬を押さえながら首を勢いよく縦に動かして頷いていた。
あまりの変貌ぶりに声も出ないといった様子だ。

大勢の前で、この様な事をされるのは、さぞ屈辱だろう。
謝っているにも関わらず、このような辱められたのだ。
訴えられるかもしれないと思ったが、彼は小さく「今まで、ごめん……ありがとう」と呟いただけだった。

これ以上、フレデリックを責める事はしないつもりだ。
彼が歩んでいく人生がこれからどうなっていくかは分からない。
もう"私"が、彼の人生に関わることはないだろう。

スッキリした気持ちでゼルナの方を見てから、背伸びをして唇にキスをする。


「ウ、ウェンディ……?」

「さぁ、行きましょう!ゼルナ様」

「うん……そうだね」

「皆様も彼方に参りましょう!パーティーは始まったばかりですから」

「わたくし、ますますウェンディ様が好きになりましたわ」

「ふふっ、わたくしもです」


彼に背を向けて歩き出す。

フレデリックと一緒に過ごしてきた時間は苦い思い出となってしまったが、それも無駄な事ばかりではない。
我慢ばかりしていたけれど、折れない心も忍耐も身に付けた。
それに学んだ知識は愛する人の為に活かしていける。

また新しく幸せな思い出で上書きされていくうちに、この苦しさは完全に消えていく事だろう。

ゼルナの手を握って、前へと歩き出した。
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