何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する
ーーーーサラは突然、異世界に召喚された。



学校からの帰り道、いつもの道を歩いていると何かに引き摺られるようにして意識を失ったのだ。


ボヤけた視界…。
目が覚めると、仮装をした人達に囲まれていた。
何故か嬉しそうに声を上げた人々。
何が起こるのか理解出来ずに恐怖で動けなかった。
周囲をグルリと見渡して泣き出しそうになるのを必死に我慢していた。

作りものにしては精巧に出来ている建物と、仮装しているにしてはリアルすぎる衣服。
それに赤や青や緑という日本では考えられない髪の色に驚いていたのも束の間ーー


「ようこそ、ライナス王国へ」


赤髪の綺麗な青年が此方を見つめていた。
怯えながらも、その青年の手を取ると拍手が聞こえてくる。
震える足でなんとか立ち上がると、とても美しい美女がニコリと微笑みかけた。


「とても可愛らしい異世界人ね……大丈夫、怖がらないで」

「さすがライナス王国の聖女だね…」

「お褒めいただきありがとうございます、カーティス殿下」


煌びやかなドレスを纏っている大人びた少女が綺麗に会釈をする。
赤髪の青年はまるで御伽噺に出てくるような王子様のような立ち振る舞いをしていた。
二人はとても美しくて、制服を着ているサラには眩しく見えた。


「ここはライナス王国……」

「………!」

「女神ライナスに護られている素晴らしい国なのです」

「……僕達には君の力が必要なんだ」

「カーティス殿下の言う通りですわ…!貴女はわたくし達の救世主なのですから」


サラは二人に促されるまま歩き出した。


「申し訳ないが、詳しい話は父上の元に行ってからでいいかい?」

「父上……?」

「僕の父は国王なんだ」


カーティスがこの国の王太子であり、父が国王である事が伝えられる。
そして豪華な椅子に座っている男性の前に立った。


「異世界の聖女よ……名は何と申す?」

「…………サラ、です」

「聖女サラ…いい名前だ」

「サラか、綺麗な名前だね」
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