何もかも奪われた純白の聖女は全てを破壊する
歓声が湧き起こり、戸惑っていた。
疑問が沢山あるのに、質問出来るような雰囲気では無かったからだ。

すると突然、神官の男が現れて額に手を当てて、次にオリーブ色の髪をした少女の額に手を当てた。


「素晴らしい……!サラ様は"純白の聖女"だ」

「え…?」

「サラ様は今までにないくらいに強い力を持っておられます!!」

「聖女って……」

「アンジェリカ様は"漆黒の聖女"となります」

「…………ありがとうございます」

「何という奇跡だ!こんなにも力の強い聖女が揃うとは!」


喜ぶ周囲とは裏腹に、心は不安で一杯だった。


「あの…っ!」

「……どうした?純白の聖女サラよ」

「此処はどこですか?家に、家に帰してください…っ!」


瞳からポロポロと涙が溢れた。
いきなり奪われた元の生活……父と母の顔が思い浮かんだ。
この問いに応えるものは誰もいない。


「………申し訳ないが」

「っ…」


その言葉で全て理解する事が出来た。
不安と絶望で、その場で泣き崩れた。
肩を震えながら顔を手のひらで覆い隠す。
そんな時、カーティスに優しく抱きしめられて目を見開いた。


「突然、辛かったろう……すまない」

「……う、っ」

「サラ様………わたくし達が居ますから」


安心させるように微笑んだ二人に涙を拭った。
カーティスとアンジェリカの手を取り立ち上がった。

その日から、ライナス王国で暮らす事になった。

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