【短編】保健室の常連客
じっくり味わっていたら、おかわりを勧められた。
気持ちは嬉しいけど……食べ盛りの彼のご飯を、これ以上減らすわけにはいかない。
お礼を言って、丁重に断った。
◇
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした!」
十数分後、保健室に再び私達の声が響いた。
「お肉、すごく美味しかった。広川シェフ、ありがとうございました」
「いえいえ。喜んでもらえて光栄です」
手を合わせたまま、お互いに頭を下げ合う。
先ほどいただいた、味が染み込んだ豚しゃぶ肉。
なんと、広川くんが味つけしたんだそう。
昨日はおばあさんとおじいさん、3人で晩ご飯を作ったんだって。
さらに。
「今日は何買う予定なの?」
「キュウリとキャベツとニンジン。今日はそこまで混まないと思うけど、一応早く買いに行くつもり」
「そっか。美味しいのが買えるといいね」
昨日に続き、今日も学校終わりにスーパーに行くという。
どうやら水曜日は、野菜が安い日らしい。