【短編】保健室の常連客
──キーンコーンカーンコーン……。
溢れ出した涙を拭いていると、チャイムが鳴った。
「恵理ちゃん、武田くん、ここは先生に任せて戻って」
「でも……」
「大丈夫。広川くんには、先生が話しておくから。気になるなら、放課後に」
「……はい」
言いくるめられ、2人で保健室を後にした。
このまま残っても、彼が起きないなら何もできないし……。仕方ないか……。
「桧村、大丈夫。お前のせいじゃねーよ」
すると、武田くんがポンと背中を叩いて慰めてきた。
「でも……追い出したことには変わりないよ」
「それは駄々をこねたからだろ? 桧村だけが全部悪いわけじゃない。あいつも、自分が悪かったって反省してた。だから顔上げろ。な?」
白い歯を見せて、得意気に口角を上げている。
手より口を動かしていて、仕事に集中せずおしゃべりばかり。
楽そうだからという理由で保健委員を選んだと知った時は、正直少し気に食わなかった。