【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


それから一時間ほどおばあさんと話をした後、その場は解散となった。
あの質問からはほとんど小笠原さんの話に合わせ、私は頷くだけでなんとか突然起きたトラブルをやり過ごすことができたのだ。

「じゃあ、香菜さん。また遊びに来てお年寄りの話し相手になってちょうだいね」

「はい。おばあ様もお体にお気をつけて」

私と小笠原さんはおばあさんと別れ門を出た瞬間、一気に緊張がほぐれ重くて深い溜め息を二人同時についた。私達は無言でお互いの顔を見ながら歩きだした。

「コホッ……ん。片桐さん。今度からは勝手なことはしないように。もし今度こういうことがあった場合は何か適当な理由をつけて断って」

「じゃあ、小笠原さんもすぐに連絡取れるようにしておいてください。……それにしても小笠原さん。今と違って子供の頃は結構太ってたんですね!慌てて写真、取り返そうとしてませんでした?」

私はその時のことを思い出しプッと笑った。
おばあさんが見せてきたアルバムには小学校時代の小笠原さんの写真がいっぱい。でも今と似つかないポッテリとした小笠原さんがそこには写っていた。

「べ、別に。俺の黒歴史だから葬り去りたかっただけだ!と、とにかく俺はまた仕事に戻るから。それよりも片桐さん、漫画は進んでるの?」

う!痛いところをついてきた。
正直言うと最近色々あってなかなか進めていないのだ。

「あの。順調、順調ですよ!ほら、小笠原さん早く仕事に戻らなきゃ。私も今日は急いでいるのでこれで失礼します」

一刻も早く漫画を描き進めなきゃ、またこの鬼編集者に何を言われるかわかったもんじゃない。

私は足早に小笠原さんの元を去り急いで家へと向かった。
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