【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


「実は先日と今日、香菜と急に連絡が取れて逢ってきたんだ」

──……あ──、その報告? って言うか今日は二回目だったのか。

小笠原さんの言葉に今さら何を期待したのか。まさか小笠原さんも自分のことを好いてくれている……なんて、少しでも思ってしまったことが恥ずかしい。

「それで色々な話しをして香菜とは……」

──やだ、聞きたくない!
「知ってます!……今日、小笠原さんと香菜さんが逢っているところを偶然見かけちゃったので」

小笠原さんの言葉を遮ってからの私は感情が溢れ歯止めがきかなくなっていた。

ドアを思いっきり開け小笠原さんの顔を睨みながらも微笑みかける自分。嫌みが止まらない。

「良かったじゃないですか、香菜さんとよりが戻って。……そうですよね、私は所詮仮の嫁だったわけだし、本物の香菜さんが戻ってくれば私は用無しになりますよね」

口から出る言葉にブレーキが効かない。自分でも嫌みな物言いをしていることはわかってる……わかってるけど。

「いや、そうじゃなくて」

「あ、私明日ここを出ていきますので!しばらくは知り合いの家に泊まることができそうなので……だから安心して香菜さんと暮らして……ヒッ、くだ……さい……ヒッ」

睨み付けながら微笑むことで精一杯の虚勢を張ろうとしたのに、いつの間にか涙が溢れ出してきた。

──もう……いやだ
口から出る言葉と感情がバラバラで自分が自分ではないみたいだ。勝手にわめいて泣いて、小笠原さんもきっと困っているだろう。

もうその場にいることに耐えられなくなった私は、小笠原さんの顔を見ることが出来ず勢いにまかせ飛び出してしまったのだ。

「片桐さん!待って!」

小笠原さんの制止も耳に入らなかった。ただその場を、どこでもいいから早く違う場所に行きたかった。

マンションのロビーまで全速力で走り抜いた私は、息を切らしながら外へ続く玄関まであと少しというところで、ある人物とすれ違い呼び止められたのだ。

「あれ?香菜さん?」

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