【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
両想い


原社長に追い出された私達はとりあえず自分達の部屋へ戻ることにした。

正直、あんなことを言って勝手に泣いて出ていって、小笠原さんと一緒にいるのがかなり気まずく自分も戻っていいのか一瞬躊躇した。

けれど、小笠原さんが無言で私の手を引っ張ってくれる。
小笠原さんが握っているその部分がとても熱く、そこから体全体に熱が伝わるような感じだった。

部屋に入った私達はしばらく玄関で電気もつけず無言のまま立ち尽くしている。そしてしばらく経った頃小笠原さんが先に口を開いたのだった。

「さっきの……原が言っていた恋人って何?」

──やっぱり小笠原さん、機嫌悪い?

「え……あ、いえ別に!何でもないんです。原社長が私達の関係に気づいてその、言わない代わりに私に恋人になれって話しでして……あ!でもちゃんと断っていますのでだいじ……ょう……」

その瞬間、真っ暗な暗闇の中、私の体は力強く引き寄せられ、広い腕の中へと吸い込まれていく。
突然のことで何が起きたかすぐには理解できなかったが、その腕の中はとても暖かかった。とても安心する腕の中。

「お、小笠原さん……?」

緊張に固まった私の体を抱きしめながら、小笠原さんはフッと優しく微笑む。

「片桐さんて、結構モテるんだね」

「ちょっと、どういう意味ですか?」

「いや……なんか危なっかしくて目が離せないなっていうこと。それに俺の嫉妬心が止まらなくなる」

──え?

そう思った途端、私を抱きしめていた両腕の力が更に強くなる。
こんなに男の人と密着するなんて私には初めてのことだったから、嬉しい反面どうしたら良いのかわからなかった。

頭の中で混乱していると耳元で小さく、少し恥ずかし気に小笠原さんが自分の気持ちを話してくれた。

「俺は……片桐さんが好きです。」


──…………えっ…と、好き……私?!

突然の小笠原さんの告白に私は動揺しまくりだ。
「え、だって小笠原さんは香菜さんと……」

小笠原さんは私の問いかけを聞くと溜め息をついたと同時に、抱きしめていた腕を(ほど)いた。
そして今度は両腕を掴み、自分の真っすぐな目を私の目線に合わせ言ってきたのである。

「やっぱり誤解をしている。……まぁ、誤解してしまうのも仕方ないけど。ちゃんと説明するから片桐さんも逃げずに聞いてくれる?」

「……は、はい。わかりました」

私は小笠原さんの告白に嬉しさもあり少し夢見心地さもあり、また香菜さんの疑問もあり……そんな複雑な気持ちのまま、小笠原さんに手を引っ張られながら更に奥へと進んでいった。
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