【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?

大学生の拓実と祐二



「ごめんね。私、好きな人がいるの。だからあなたとは付き合えない」

その女性はこの大学で二番……いや一番とも言っていいほどの美貌の持ち主。大学で知らない人はいないぐらいだ。

「君の好きな人って、もしかして小笠原拓実……だったりする?」

「え、なんでわかったの? 実はそうなの……拓実くんが好き」

── ハァ─、またか。また小笠原!

この半年間、大学で美貌・知性ベスト(ファイブ)に入る女性全てに告白したが、ことごとくフラれた。それも皆、理由が同じなのが気にくわない。

“私、小笠原くんが好きなの”

なぜだ!同じ出版社の御曹司で見た目だって僕はモテる。それなのになぜ皆、小笠原を好きになるんだ。

──そうだ。なにか僕にないものを小笠原が持っているのかもしれない! 同じゼミだし当然僕のことは知っているはずだ。早速今日から小笠原の友達になって探ってみようか。

ちょうどその時だった。目の前を小笠原 拓実が横切ったのだ。
相変わらず姿勢のいい歩き方。あのメガネ男子がまた知性のある感じを醸し出している。

「や、やぁ。小笠原くん!今からお昼?ちょうど僕も行こうとしてたんだ。一緒に行かない?」

急に呼び止められた小笠原は、僕の方をしばらくの間ジッと見ている。いくら僕がカッコ良くてモテるからって、そんなに見つめられても男には全く興味がない。

「…………君……誰だっけ?」

──へ? この僕を知らない? いやいやまさかこの僕を知らないなんて。

「ほ、ほら。同じゼミの原だよ。原 祐二!」

「……悪いけど知らないな」

それだけ言い残して小笠原はまた歩きだしてしまった。
と、その時さっき僕を振った大学で一番の美貌の持ち主の子が、黄色い声で小笠原目がけて向かってくる。

「拓実くぅ─ん!ちょっとまってぇ─。一緒にお昼に行こうって言ったじゃなぁい?」

彼女は僕の前を通り抜けて小笠原の腕にしがみついた。

──なんだ。あの二人、もう付き合っていたのか。じゃあ告白してもダメなわけだよな。別に僕自身がフラれたわけじゃないんだよな。

僕は自分が納得する言い訳を頭の中に言い聞かせていたその瞬間、小笠原は彼女の腕を振り払ったのだ。

「君も誰? さっきから慣れ慣れしいよ」

──彼女じゃないんかい?!

小笠原の冷たい態度に彼女は呆然とその場に立ち尽くしている。まさか自分がフラれるとは思っていなかったのだろう。

それでもなお颯爽と歩く小笠原に僕はなぜかとても興味が沸いてきた。
急いで僕は小笠原の後を追い彼の手を取ってこう言ったのだ。

「小笠原くん!僕は君に興味を持った!今日から僕達は親友だよ」

「……だから誰?!」




《現在》───────そう。

あの日から僕達は時には蹴落とし、時には分かち合う親友になったんだよな─。

ワインを飲みながら家のお風呂に浸かり、僕は昔の光景を思い浮かべていた。



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