さくらの結婚
「結婚生活は二年で、子育て歴は十五年だって部長に言ったらさ、娘さんと結婚できて良かったじゃない、なんて言われちゃってさ。確かにさくらと一緒になる為に結婚したみたいだなって思ってさ」

「一郎は運がないよねー。せっかくママと結婚したのに、ママがすぐにいなくなってさ。おまけに可愛くないコブが残って」

「本当だな」

「ちょっと、そこは『そんな事ない。可愛いコブだよ』って言う所でしょ?」
 さくらがムッとしたように僕を睨む。中学生の頃のさくらによくされた表情だ。

「はいはい。可愛いコブですよ」

 さくらと顔を見合わせて笑った。
 それからさくらと辛口の純米吟醸酒を飲み交わし、仕事の話をした。
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