さくらの結婚
 さくらが就職して三年が経つ。勤め先のホテルは東京駅から京葉線で三十分ぐらいの海浜幕張駅の近くにあり、僕の会社も近くにあった。時間が合う時は一緒にさくらのホテルでランチをしたり、一緒に帰ったりしていたが、さくらが一年前に新しい部署に異動してからはなかった。

 今夜は久々にお声がかかったという訳だ。 

 昔からさくらとの約束があると、あまりにもウキウキとしてるのか、よく同僚に娘さんとのデートでもあるのかとからかわれる。僕は顔に出やすいようだ。そんな話をしたら、確かに一郎はわかり易いとさくらにも言われた。

「怒ってる時とかすぐにわかるもん。もう子供みたいに不機嫌な態度取っちゃってさ。でも、一郎のいい所は引きずらない所だよね。怒ってると思ったら、次の瞬間に私の顔見て笑ってるもん。切り替えが早くて感心しちゃう」

「さくらさん、その言い方はちっとも感心してるようには聞こえないんですけど」

「あっ、怒った」

 さくらがクスクスと笑う。

「怒ってませんよ」
「嘘だー」

 さらにさくらが可笑しそうに笑う。
 さくらの楽しそうな笑い声を聞きながら、寂しくなる。
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