キミの恋のはじまりは
「……花島さん、偶然、会ったの?」
「ん、ホームで電車待ってたら」
「そ、それで……」
「方向同じだから、途中まで一緒に帰ってきた」
「……ほ、他には…」
……チョコのこと、聞かなくても、泉から言ってくれる?
「チョコもらったー」って何気なくいつもの調子で言ってくれたらいいのに。
そしたら私も「そうなんだ」って、言える気がするのに。確かに心がヒリヒリするけど、でもきっと言えるのに。
祈るように、自分の身勝手さを忘れて、泉の次の言葉を待つけれど、期待した通りにはならない。
「他に?」と泉は訝しがるように目を細めて黙る。
でも、なにも思い当たることはないというように、首を傾げる。
…言っては、くれないんだ。
絡まった指が、急に重く感じた。
泉が小さく息を吸う。
「……莉世、ごめん。やっぱり連絡ほしかった」
泉はなおも視線を落としたままで、私をちっとも見ようとしない。
あたりまえだ。葉山さんのこと、隠していたのは私だもん。
それなのに、泉は私を気遣って、謝って。私が悲しませてる。
……わかっているけれど。
泉だって、隠してる。私に言ってくれない。
だから、私を見ないんじゃないの?
……いやだ。
なんで、私、こんなふうに思ってしまうんだろう。前はもっと、違ったのに。
心の中に澱んだ気持ちが溜まって、もう息ができない。
気持ちがゴツゴツして、ドロドロして、グチャグチャだ。