キミの恋のはじまりは
「……泉」
呼べば、ゆっくりと視線を上げて私に焦点を合わせるダークブラウンの瞳が、今日は遠く感じる。
「泉、なん、て……」
花島さんにチョコもらってたじゃん、と言いそうになって思わず口をつぐむ。
違う、こんな言い方したいんじゃない。
ただ教えて欲しかった。隠さないで欲しかった。
自分から聞けば済む。
でも、もう、聞けない……。
だから、全部飲み込んで、頬を上げて笑った。
「……なんでもない。ごめん。帰るね」
触れていた指を解くと、泉が呆然と色をなくした顔をしていた。
ああ、まただ。どうして、いつもうまくできないんだろう。
繰り返してばかり。
でも、いまは早く泉から離れたかった。
もういつまで取り繕えるかわからない。
まえはもっとうまく笑えたのに。
気持ちが大きくなって、自分でも持て余してしまう。
眉間に力を入れて泉をそのままにして歩き出すと、すぐに腕をぐっと引かれた。