偽りの恋人と生贄の三日間

キスして

 キトエが一枚引いて新たに掲げたカードは、ダイヤのクイーン。また強いカードだ、とげんなりしてしまわないように顔を引きしめる。神様はリコのことが嫌いで、キトエのことがよっぽど好きらしい。

 キトエが今までと違う行動を取ったということは、リコのカードが強いのだろうか。けれどキトエがクイーンを出したから、分からなくなった。リコのカードが強かったのだとしても、クイーンより強いかどうか。

「わたしのカードが強かったから変えたの?」

 キトエを見つめると、目をそらされた。図星なのか、恥ずかしいのか、さっきの一件で分からなくなってしまった。何となく図星でそらしている気もするが、顔に出やすいキトエなのに、ここまで読めないとは思わなかった。

 変えるか、変えないか。

 やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいい。

「変える」

 カードを捨てた。山から引く。

「勝負」

 キトエが額のカードを中央へ置くのと同時に、カードを表へ返した。

 キトエのカードはダイヤのクイーン。リコのカードは、スペードのエース。息をのむ。

「勝ち!」

< 18 / 61 >

この作品をシェア

pagetop