偽りの恋人と生贄の三日間

告白して

 城に来たとき、絶対にここを歩いてみたいと思ったのだ。空の色と花の色を見つめていると、自分がどこに立っているのか分からなくなる。

 応接室、礼拝堂、寝室、書架、台所、洗濯室と巡ってきたが、この現実みのない水色の世界が、リコは一番好きだった。

「すごいね。空の中にいるみたい」

 遅れてついてきたキトエの足音に振り返る。

 溶けるような薄水色の髪が、白のスタンドカラーの上着についた、金ボタンをつなぐ鎖が、左肩から流れる、織模様の入った飾り布が、風を柔らかく含む。絶え間なく日の光を弾き返す薄氷のように、いつまでも見ていられる。

 甘い香りを感じながら、リコはキトエを見つめる。キトエは淡く微笑んでくれたが、見つめ続けると戸惑ったのか、居心地の悪そうな顔になった。

 ぼんやりと視線をそのままにしていたら、思い出してリコは手を打ち合わせた。

「そうだ。忘れてた。ねえキトエ、お願いがあるの」

「何だ?」

「わたしに告白して」

 キトエは理解できなかったのか、顔色を変えずリコを見ている。

「わたしに告白して」

「いや、聞こえてる……何で」

 にわかに狼狽しだす。

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