偽りの恋人と生贄の三日間

あまたの生贄を殺してきた呪縛

 結界を壊した瞬間、この痛みで死ぬのだろうか。どうやっても、城に入った瞬間から死は決まっていたのだろうか。

(うそでしょ?)

 散々魔女と忌まれてきたのに、理不尽な力に抗えない。肝心なときに何の役にも立たない、不幸なだけの力。

 こんなところで死にたくない。痛い、痛い、痛い。

(痛い、死にたくない、怖い、嫌だ!)

 腕を握りしめていた手を引きはがされた。

 魔力がぶつかる風の渦に薄水色の髪を浮かばせて、キトエがかたわらで決死の表情で見つめていた。手をきつく握りしめられる。

「俺は何もできない。リコが苦しんでても何もできない。でも、どんなことがあっても、ずっと、リコのそばにいる」

 濃紺のマントがはためくなかで、声を張った。

 死にたくない。ひとりではない。そうだった。

(そんなこと言われたら、泣きそうになる)

 キトエがいる。今までも、今も。

 死ぬとしても、抗う死を。抗って死んでも、キトエが絶対に手を離さないでくれれば後悔しない。

 けれど、絶対に死なない。

 絶対に、生きる。

「お願い。絶対に、離さないで」

 力を振りしぼって、微笑んだ。

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