偽りの恋人と生贄の三日間
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ふたつのお願い

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 円卓にひらかれたリコのカードはスペードの二。キトエのカードはハートの七。キトエの勝ちだ。

「二って一番弱いカードじゃない。変えておけばよかった。キトエ顔から分かるかと思ったけど意外と分からなかったし。はい、じゃあ何でもひとつお願い聞くよ」

 キトエの正面で、円卓についたリコが悔しそうに口を曲げる。

 城に来てから二日目。意外とやることがないとリコが言うので、カードをすることになった。特別ルールで『勝ったほうが負けたほうに何でもひとつお願いできる』とのことだったが。

「主に命令するわけにはいかない」

 勝っても最初から『お願い』をするつもりはなかった。

「別に命令じゃなくて当たり障りのない質問でも何でもいいんだよ? 好きな食べ物とか」

「リコの好きな食べ物はチョコレートだろ。知ってる」

 言ってから、明日リコを失うのだとはっきりとわき上がってきて、叫び狂いそうになる心を必死で押し潰した。

「添い寝してほしいとか一緒に水浴びしたいとか」

 何を言われたのか分からず、リコを見つめてしまった。リコはいたって真面目な顔をしている。

 添い寝。水浴び。ほんの一瞬想像してしまって、一気に頬が熱くなった。

「主じゃなくても女性にそんなこと言ったらただの変態だろっ……」

 自分の汚らわしさに吐き気がした。こうやってリコを女性として見てしまうことは、今まで数えきれないほどあった。

 リコのことが好きだ。愛している。けれど主と騎士だ。絶対に許されない。

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