斉藤くんが、冷たくなった。
「あ、そうだ。駄菓子屋に行ったことがないなら見てみる?」
私は斉藤くんを庭の一角にある倉庫に連れていった。
駄菓子はさすがに残ってないけれど、ここにはシャボン玉や吹き上げパイプ。空気でジャンプするカエルに伸びるカメレオン棒など、駄菓子屋では定番のおもちゃが置かれている。
「すげえ。これはなに?」
斉藤くんは壁にかけられていたカードの束を手に取った。
「それは【ようかいけむり】だよ。カードの白い粉を指先に塗って、つけたり離したりすると煙が出てくるんだよ」
「本当だ……!!」
斉藤くんはまるで子供に戻ったみたいに、嬉しそうにしていた。
「このでかい冷凍庫はアイス用?」
「うん。駄菓子屋でかき氷もやってたみたいだから、その氷も入れてたらしいよ」
業務用の冷凍庫は横長で仕切りがない。コンビニに置かれてるものよりも大きいからなのか、斉藤くんは興味津々に見ていた。
「これ壊れてんの?」
「ううん。コンセントさせば使えるよ」
「なら倉庫に置いておくのもったいなくね?」
「でも家の中に入れるのは邪魔だし、使い道がないんだよ」
両親は処分することも考えたらしいけど、それも億劫になってしまったのか冷凍庫は何年もここに放置されている。
この倉庫自体、滅多に誰も入らない場所だから、もしかしたらお母さんたちは冷凍庫の存在を忘れている可能性が高い。