斉藤くんが、冷たくなった。
「……あいつ、もう俺のことなんてどうでもいいのかもな」
斉藤くんが小さな声で呟いた。
今でも彼の頭の中は真紀のことでいっぱいだ。今頃他の人と一緒にいるかもしれないと想像するだけで気が狂いそうになるほど、彼女のことを想っている。
「……そんなに、真紀じゃなきゃダメなの?」
私は斉藤くんの洋服の袖を掴んだ。
女の子なら、他にもいっぱいいる。
斉藤くんだけを見てくれる子だって、案外近くにいるかもしれない。
「もしも真紀と別れたら、菅谷が俺のことを慰めてくれる?」
その問いかけに、首を縦に振った。
溢れだす罪悪感。
だけど、人を好きになる気持ちは止められない。
たとえそれによって、誰かの幸せを奪うことになったとしても。