斉藤くんが、冷たくなった。
「スマホを見たってことは……なにか浮気相手とのやり取りでもあったの?」
「うん。また遊ぼうねとか、早く会いたいとか、ハートマークだらけのラインで、あれは絶対に黒だと思う」
私はいつも斉藤くんを見てるから、今日一日なんとなく元気がないことには気づいていた。
でもまさか、真紀の浮気で落ち込んでいたなんて、思いもしなかった。
「そ、その浮気相手って……」
おそるおそる聞くと、斉藤くんは静かに答えた。
「多分、三年生の安村先輩だと思う」
安村先輩はかなりのイケメンで、なおかつバスケ部のエースだ。
学校で一番モテるといっても大袈裟じゃないくらい女子から人気がある先輩だけど、それ以上に遊び人だという噂も聞いたことがある。
タイプの人がいればすぐに手を出して、まるで学食の日替わりランチみたいに女子を取っ替え引っ替えしてるらしい。