Re:スタート
「俺は。ずっと、佳奈に届けるために歌ってきたんだ」

「……」

「佳奈に俺の想いが届くまで、何度だって歌う。そう思って頑張ってきたんだ」



悠の。

悠の言葉に泣きそうになる。

静まり返った空気の中、悠の声だけが響く。

悠の声がまっすぐに私の心へ突き刺さる。

涙で視界がぼやける。

何も言えない私に悠が苦笑する。



「……なんて、今の佳奈には関係ないよな」

「え?」

「だって、新しい彼氏とうまくやっているんだろ? だから、社会復帰もできたんだよな……」



痛々しいくらいの切ない表情をした悠。

ズキン、と心が痛む。
< 140 / 224 >

この作品をシェア

pagetop