掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
何らかの理由で、環はその女の存在を知ってしまったのだろう。

《わかった。
見送りには行けないけど、気をつけて帰れ》


女か……。

そんな気はしていた。
一昨日あいつが帰ってきた時に、どこか雰囲気が変わった気がしたから。

いつもガツガツした所を隠しきれていなかったあいつが、少し落ち着いた気がしたんだ。

両親に会わせたいと思うくらいの女だ。本気なんだろう。

だが、環はどうなるんだよ?

環こそが小さい頃からずっと拓郎を傍で支えてきたのに。

「くそっ……」

氷のように冷たくなって、泣き腫らした目が痛々しかった。
そんな環を思うと、言いようのない怒りが込み上げてきた。




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