掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
川原さん、春から入会してまだ4ヶ月の付き合いなのに、完全に俺たちの関係を把握しているな。さすが元教師。

こういう時、いつも淳之介が側にいて俺の話を聞いてくれる。

いや、そもそも今回のこのモヤモヤは、淳之介からちゃんと環のことを聞き出せなかったからなんだが……。
あいつのせいじゃないか。

「フッ……まぁ、青春真っ只中だからね、拓郎くんは。
たくさん悩むといいよ」

「川原さん……俺は悩んでいるわけじゃ」

「悩みも成長の糧だよ。
ただね、一つだけアドバイスしてあげよう」

「? ……なんですか?」

「モヤモヤの元を、放置してはいけないよ。
見なかったことにしよう。
聞かなかったことにしよう。
なかったことにしよう。
……それはダメだ。
とことん、向き合ってみなさい。
そうすれば、自分の進むべき方向が見つかるから」

「……」

「ま、こんなおじいちゃんで良ければ、何時でも話は聞くから」

そう言って、ポンポンと俺の肩をたたいて、川原さんは奥さんの待つテントに戻って行った。


とことん向き合う?



……何と? 何と向き合うんだ?



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