初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

「……お兄様、あの席はロイヤルシートでした」
「だ、だから何だ。王子殿下のご厚意で……」
 リエラの怒りを感じ取ったらしいレイモンドが、僅かに気勢を削がれた。

「王家御用達の、貴族も利用するレストランの、皆が注目する席でしたのよ?」
 あの目立つ席で騒ぎ立てれば、そりゃあ醜聞もあっと言う間に広がるというものだ。

「な、何だとっ」
「ご存知で無かったのですか? あの店のロイヤルシートは王族の姿を非公式で拝める場所としても人気ですのに」
 そう、お見合いの席は中二階の高さにある、とても目立つ場所だったのだ。当然他の席より一段も二段も高い。
「……というか、そんな我が家の醜聞に第三王子殿下を巻き込んでしまった事はきちんと謝ってらしたのかしら?」
「そ、それは……」

 ──兄は目に見えて焦っている。
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