冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 当日のことを楽しそうに話す菫を見ていたら、ついぽろっと本音がこぼれた。表情も自然と緩まり、微笑んでしまう。

 そんな俺を見て、菫は驚いたように目を見開いている。

「充さん。なんだか今日はちょっと……」

 そこで言葉を止めた彼女だけれど、なにを言いたいのかは想像がつく。俺の言動がいつもと違うと言いたいのだろう。

「自分に素直になってみようと思っただけだ」

 俺を見つめたまま固まっている菫に向けてそう伝えれば、さらに困ったような表情をされてしまった。

 まさか俺に好意を寄せられているとは露ほどにも思っていないのだろう。

 好きだと伝えられたらどれだけ楽か。でも、俺のことを好きになれないと宣言した菫に対して、俺の一方的な想いを伝えるのは酷だろう。

 それなら、今のままでもいい。

 俺は菫のことが好きだけど、彼女の気持ちが俺に向いてほしいとは思わない。俺は、彼女の心までは欲しがらない。ただ、妻としてそばにいてくれるだけでいい。

 改めて自分に強く言い聞かせた。


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