冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「なにかありましたか?」
『俺にはなにもない。病院の結果が気になっただけだ』

 産婦人科に行くことは充さんにも伝えてある。気になってわざわざ電話を掛けてきたのだろう。

「七週に入ったところだと言われました。予定日は来年の二月だそうです」
『そうか。性別は……さすがにまだわからないか』
「そうですね」

 跡取りを望んでいる彼にとってはやはり男の子がいいのだろうか。それなら充さんの期待に応えられるように男の子を産まないと……。

 そんなことを思ったら胸がきゅっと痛んだ。無事に元気に生まれてくれさえすれば、私は性別なんてどちらでもいいのに。

『菫。今日はこれから雨が降る予報が出ている。気を付けて帰れよ』
「わかりました」

 そこで通話は切れた。

 スマホをバッグの中に戻しながら私の心境は複雑だ。

 充さんは私を労わるような言葉を掛けてくれたけれど、きっと私のことが心配なのではなくて、私のお腹の中にいる自分の跡取りとなる子供のことを気に掛けているのだろう。

 やっぱり彼は私には興味がないんだ。そんなことを思うと切なくなる。
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