冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 妊娠して嬉しいはずなのにどこか寂しく思うのは、充さんの心が私に向いていないから。彼にとって私はこのままずっと妻の務めを果たすだけの女なのだろうか。

 歩み寄れば心を開いてくれると思ったけれど、その自信もなくなってしまった。

 商業施設内にあるスーパーで買い物を済ませてから外に出ると、頬にぽつんと雨粒があたる。どうやら降ってきたようだ。

 肩に掛けているトートバッグから折り畳み傘を取り出そうとするも、もう片方の手に買い物袋を持っているため手間取ってしまう。それでもなんとか取り出して傘を広げた。

 スーパーから歩いて十分ほどの距離にあるマンションに到着する頃には雨脚は強まり、地面にたたきつける雨で視界も悪くなっていた。

 傘を差していたはずが服も靴もバッグも濡れてしまっている。自宅に入り、さっそく着替えようと思ったときだった。

「あれ?」

 首もとにネックレスがないことに気が付く。どこかに引っ掛けて落としてしまったのだろうか。玄関や廊下、リビング、寝室と帰宅してから立ち寄った場所を確認するけれど見つからない。
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